
今日はママが 生後6ヶ月~4歳5ヵ月の頃 福島の。
事務所兼、自宅のお家。郡山に住んでた頃のお話 ね。
むかしむかし。
そのまた昔のお話――
朝から夕方まで事務所の中を走り回ったり 事務机の上にスケッチブックとクレパスひろげて一日中絵を描いたり。
ママのパパの会社。
部屋と事務所がつながってて寝室は 2階なんだけど。
1階の茶の間で朝ご飯たべおわると毎日その日選んだおもちゃをかかえて事務所に走るんだ。
こうさいさんとくろいわさんとはしもとくんと…
"あいすじいちゃん"ってゆう親戚のおじちゃんが働いててね。
いっつもアイス買ってくれるおじちゃん。
近くの商店で。
カップのバニラ。
ママ違う味も食べたかったんだけどいつも決まって それ。
けどうれしくてさ。
いつもお礼に ぬり絵を塗ってプレゼントした。
あ ママね"ちり紙交換"がこわくてね。
大きなマイクで へんな声の。
"まいど~おさわがせして~おります~ちりがみこうかんで~ございます~"
ってさ。
縁側でしゃぼん玉してる時にかぎって くるんだよ。
わあ!! って言ってキッチンに走ってって ママのママのエプロンの中にかくれるんだけど。
耳ふさいでも聞こえてくるしすごくこわかった。
夜更かしして遊んでるとね、ママのママが言うんだよ。
"まいどさん来るよ!" って ね。
それから…
ママのママってね、キャラクターが付いてる服とか靴とかぜんぜん買ってくんないの。
けどある日お茶碗ならいいよって アラレちゃんのご飯茶碗買ってもらったんだよ。
うれしくてうれしくて 毎日残さずご飯たべてね。
――ある朝。
ママのママが台所で洗い物しててさ。
ママはひとりでドリフ見てたんだけど。
そしたらね。
そしたら パリーン …って。
嫌な予感はしたんだよ。
…案の定。
ママの大事なアラレちゃんが まっぷたつ。
がっちゃんなんて どっかに飛んでっちゃったもんね。
はじめてのお祭りでは金魚を買ったの。
大事に大事に育てたのに 死んじゃって。
はじめてお墓をつくった。
それから 猫を拾って"デイジー"ってつけたんだ。
――次の日。
やっぱり"ぽち"にした。
なんかしっくりこなくてね。
毎日一緒に寝て いっつもだっこして。
ある日ねママが ドラえもんの絵本読んでたの。
そしたらママのママと社長おじちゃんがね 玄関で。
来ちゃだめ! って言ったんだ。
床に敷かれた白い布が "ぽち"の形してた。
――次の日から "ぽち"がいないから探したんだけど。
どこにもいなくて それから。
その後は 覚えてないけど。
少し大きくなってから聞いたよ。
あの夜ぽちは 家の前で。
タクシーにひかれた って。
ぽちがいなくなってしばらくして ママのパパとママのママが。
ペットショップに犬を見につれてってくれたの。
お店に入ってすぐ 白くてちっちゃなホワイトテリアがいてね。
ママどうしてもその子がよくて。
お店に入ってまだその子しか見てないのにさ。
その子がいいってママごねたよ。
何日たって。
その子がおうちに来た。
うれしかった。
うれしくてママ、ぴょんぴょん踊ったんだから。
けどね。
この前、つい何日か前この話をしてたらママのママが言ったんだ。
「あの子は あの日ペットショップで見た子と違う子よ。」
――それはそれは悩んでね。
あ "その子の名前" ね。
一晩悩んだけど決まらなくて。
次の日も。その次の日も。
4日くらいしてやっと決まって。
"ぽっちー"
猫の"ぽち"から "ぽ"と"ち"をもらったの。
そして毎日 一緒に寝ていっつもだっこした。
"はじめてのおつかい"はね、近くの商店で「はっさくを2つ」買ってくるようにって言われて。
へんてこな買い物バックと500円玉持って100メートルくらい先の商店まで ひとりで歩いたんだよ。
商店のおじさんはね。
子供ながらにママ、いっつも思ってたんだけど。
絶対ママのママのことが好きなんだ。
奥さんも 子供も3人くらいいたけどきっとそう って。
商店にについて。そのおじさんに"はっさくを2つ"わたして会計してる時。
ふ とね。
目にとまったのが…
レジにぶら下がってる段ボール。
そこにいろんな色のサングラスがささっててね。
かっこいいんだよ これが。
いっつもほしくて見てたやつ。
色も決めてたんだから。
"きいろ"。
ママ、"はっさく2こ"を袋に入れてるおじさんに 言ったんだ。
「これ、あとでおかあさんがお金はらいます」 って。
帰り道はね そりゃあもううきうきで。
早々サングラスかけちゃってさ。
真っ黒で前見えないの。
家が近づいてくるとママ "…。怒られるかな。" って。
ちょっとどきどきしてきちゃって。
だってママのママ、こわいから。
いっつもね、"今日はだめ"とか"おかしは一つ"とか。
"いいかげんにしなさい!" っていっつもママを怒るんだから。
とか考えながら歩ってたら お家ついちゃって。
沈黙――。
ママ怒られると思って
「…あのね…」
って言い訳さがしてたら そしたらね。
ママのパパとママのママが
大笑いして。
ママは泣きながら 笑ったんだよ。
うれしいのとほっとしたのとつかれたのと。
なんだかよく わかんなくなっちゃったんだよきっと。
あとは――
"いったん"ってゆう1つ年上の 大好きな近所の女の子は。
しろつめ草でかんむりつくるのが上手でね。
いっつもおしえてもらうんだけど。
ママなかなか覚えられなくてさ。
だっていったんよりひとつ年下なのに。
いったんはいつもちょっとだけ。
ちょっとだけ不機嫌そうな顔をしてた っけ。
それから年に一度 ヨークにくる二匹の"なまはげ"は。
あれはさすがにこまったよ。
だってね カートに乗ったママは年に一度。
なまはげが自動ドアを開けた瞬間に。
じょじょじょじょじょ…
って。
おもらししちゃうんだからこまったよ。
あとは――
あとは また。今度にしよう。
チビ、
チビは今 何歳になっただろう。
ママがちびより小さかった頃の話を。
今ちびは どんな顔して読むんだろう か。
"ままの昔話"―1~4歳― 完。